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世界最大ハードウェアアクセレレーターHAXデモデー参加レポート

2020年までにインターネットにつながるデバイスの数は380億個以上に上ると言われ、また2035年までにはロボット産業の市場規模は10兆円になると見込まれている。今後の未来を考える上でIoTやロボットなど「ハードウェア」の存在は見逃すことはできない。

近年、Kickstarterなどのクラウドファンディングプラットフォームの登場や、モジュール化の進行、ネット上で必要な物の購入が容易になったことの影響もあり、ハードウェアスタートアップを行う人は増えてきた。そんなハードウェアスタートアップに特化した世界最大のアクセレレーター「HAX」のデモデーが米国時間5月17日サンフランシスコで開催され、 参加してきたので、早速そのレポートを公開したい。

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HAXとは

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HAXは世界最大のハードウェアアクセレレーターであり、ハードウェアのシリコンバレーと呼ばれる中国・深センと米国サンフランシスコに拠点を持つ。彼らは「HAX Accelerator 」と言う中国深センでプロトタイピングからプロダクトローンチまでの初期段階にフォーカスしたプログラムと「HAX Boost 」と言うプロダクトのローンチ後のディストリビューションに特化したプログラムである。彼らは「HAX Accelerator」を通して、バッジに参加するすべてのスタートアップがプロダクトマーケットフィットを達成できることを目指すと公言している。

HAX VII デモデー概要

今回参加したのは「HAX Accelerator」のデモデーである。プログラムを卒業したシードステージの会社15社がピッチを行った。HAXのフォーカスしている領域として下記5つをあげている。

  1. Life
  2. Health
  3. Robotics
  4. Infra
  5. Fab

今回はデモデーVIIで第8回目のバッチとなり、参加企業の国籍はイギリス、アメリカ、スイス、オーストラリア、カナダ、シンガポール、韓国と多岐にわたる。

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参加企業15社紹介

一部ホームページなども開設されておらず写真がない企業もあるがご了承願いたい。

(1)Wazer:

デジタルデータと高圧の水を使用することで、どんな硬いものでも精密にカットできる小型の機械を開発。産業用の巨大なカッターをどんな小さなワークショップなどでも使用してもらえることでハードウェアの「もの」をカッティングすることを助けることをミッションする。

(2)Kniterate: 服、編み物用の3Dプリンター。セーター1つも3時間ほどで完成するという。今後は小売店がカスタマイズ商品をオンデマンドで作れるように展開を目指すとのこと。

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(3)CleanRobotics:コンピュータービジョンの技術を使用し、ゴミを自動で認識し振り分けてくれるロボット。企業向けに展開し、ゴミの分別の効率化を行うことでよりクリーンな世界の実現を目指す。

(4)Rovenso:災害地や段差が激しいところもきっちり進んでいけるロボット。

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(5)LumenCache: LEDライトやスマホなどが直流(DC)を必要するものが家の中に増えてきているが、家の中の電気が交流(AC)になっていることに目をつけ、家の電気を直流に帰るデバイスを提供。それによって家のスマートホームの促進及び省エネを目指す。

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(6)HabitAware: 無意識のうちに癖になってしまっている爪噛みなど、体の習慣を検知しいつどんな時間帯にやっているかを分析してアラートを送ってくれるウェアラブルブレスレット。

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(7)FoodMarble: 胃の消化不良に悩む人向けの、持ち運び可能な呼気分析デバイス。食事の前後で息を吹きかけることで、そのデータをもとに適切な食事を教えてくれる。

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(8)Stepp: ランナー向けのウェアラブルデバイス(コインサイズ)で、足と腰につけることで、走ってる時の姿勢などを分析し、体への疲労を検知そして予測を行ってくれる。

(9)my.Flow: スマートタンポン。専用のタンポンとコインサイズのトラッカーを身につけることで、女性の生理時の問題を解決する。

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(10)Sana: 不眠症に悩む人向けの、10分で眠りにつけるアイマスク。睡眠薬ではなく脳波や心拍数を分析し眠りにつけるようにする。

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(11)Grobo: 適切な光量や栄養を自動で与えてくれる室内ガーデニング用マシーン。。医療大麻の栽培向けに展開を目指す。

(12)The Alpha Labs: コンシューマー向けのARメガネ

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(13)Octopus: 幼児向けのアイコンを活用したスマートウォッチ。子供にアイコンでプッシュ通知を送ることで良い習慣を身につけることを目指す。

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(14)Nura: 自分に取って聞きやすい最適な音を自動調節してくれる ヘッドフォン。すでにクラウドファンディングのプロジェクトを達成済みとのこと。

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(15)Trainerbot: 卓球練習用ロボット。アプリを使って設定を変えながらピンポン玉を投げてくれるので練習することができる。

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デモデーを通じての所感まとめ

会場は立ち見が続出するほどの満員であり、日本人の方も多く見られ、独特の熱気で包まれていた。全ての会社のステージはプロトタイプが終わっており、これから正式ローンチや、Kickstarterのプロジェクトを行うところばかりで、まさにHAX Acceleratorのターゲットとするステージの会社ばかりである。

参加企業をカテゴリ別に分けてみると下記のようになる。

  1. Life: 5社
  2. Health: 4社
  3. Robotics: 3社
  4. Infra: 1社
  5. Fab: 2社

Lifeカテゴリに集中していることがわかる。これらの会社は主にスマートウォッチやランニングのトラッカーなどのウェアラブルデバイスを開発しており、まさに新規参入が多い領域の一つであると言える。

ゴミの分別を自動で行うロボットなど、Robotics分野はまだ数としては多くはないが、HAXの卒業生であるローカルのデリバリーロボットの「dispatch」は今年4月に米国トップティアVCであるアンドリーセン・ホロウィッツより$2Mの調達を行ったばかりで、今後もたくさんのロボットスタートアップの出現が予想され、一層注目の分野である。

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ウェアラブル系のプロダクトは、 既存のプロダクトの枠組みの中で、どのようなターゲットに対してどのような機能・サービスを載せて提供していくか、というところが各社違っているが、既存の枠組みを大きく飛び越えるようなプロダクトはまだ見受けられなかったと感じる。

日本で「1日2 時間睡眠を可能にするアイマスク」として大きく注目を浴びた、ニューロンだが、それに少し似たプロダクトで「Sana」という10分で眠りつくことができるアイマスクを発表した。プロダクト自体の完成品は発表されなかったが、会場でも注目を浴びており、今後が楽しみである。

HAX卒業生にはKickstarterのプロジェクトを成功させていたり(中には全スポーツカテゴリで一番多く資金調達した会社も)、Best Buyなどの大手小売店との販売網を既に確立している企業が数多く存在している。今後ハードウェアスタートアップを始めたい人、今ハードウェアスタートアップをやっている人にとっては、ハードウェア専門の人材が集まるネットワークのハブとして、またKickstarterのプロジェクトをいかに成功させるかなど、ハードウェアスタートアップに特化したノウハウが集まるハブとして、HAXは大きな役割を果たしているのではないかと感じた。Ycombinatorのような総合型のアクセレレーターが大きな成果を残している一方でBitcoinやVR、そしてハードウェアのような専門分野に特化したアクセレレーターも多数出てきているが、彼ら独自のバリューを出していると感じた。今後もハードウェアの分野は注視して行きたい。

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この記事の著者

田中 優祐
CyberAgent Ventures,Inc
米国オフィス リサーチャー

神戸大学経営学部在学中に、米国ワシントン大学への交換留学を経験。帰国後2014年8月より株式会社サイバーエージェント・ベンチャーズにアソシエイトインターンとしてジョイン。シード特化の投資チーム「Seed Generator Fund」の立ち上げに参画。2015年3月の大学卒業直前に米国移住&起業を決意。2015年11月よりサイバーエージェント・ベンチャーズ米国オフィスにリサチャーとしてジョイン。神戸大学経営学部卒。

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